平成日本、辺土の現実

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真っ赤なハートAEDの大氾濫

 大きな赤いハートの張り紙が、日本国中津々浦々に散らばっている。

 大都市はいうに及ばず、あの町にもこの町でも、ビルや大きな建物の入り口や玄関にぺったりと貼りつけてあって誰の目にも必ずとまる、あの貼り紙だ。

 それは、そこを出入りする人々に、AED(心臓の突然の異常な動きを一時的に直す「自動体外式除細動器」というもの)がここにありますよと知らせている。

 2007/11/28 の化学工業日報によれば、AEDは、病院、学校などの公共施設にとどまらず企業内の設置も増加するなど、その市場は拡大を続けている。高速道路のサービスエリア367ヶ所にもすでに設置された。

 さて、百万都市、福岡市を取り巻くいくつかのベッドタウンは、この国にはまれな富裕な中小都市群なのだろうか。AEDの普及ぶりは並外れているように見える。

 そのうちの一つの自治体の役所をたずねた。あたりの街並みの平凡な構えとはうって変わった、ひときわ荘重な玄関。大きなガラス戸がひとりでに横滑りして入り口を大きく開ける。ガラス戸の延長面上のガラスの壁に貼りつけた紙が目に入った。大きく真っ赤なハートの下にAEDの文字がある。
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 市役所での用務のあと、お隣の市民交流センターに向かった。するとその玄関にもAEDの赤い張り札。市役所とは別にここにも置いてあるのだった。
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 市民交流センターの裏手には総合福祉センターの建物がある。予感とも確信ともつかぬものが胸をよぎる。念のため裏手に回って行ってみると、果たせるかな、その玄関にもAEDの張り紙が麗々しく貼ってあった。
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 こうなると、すぐ近くの市民健康センターも気になる。行ってみるとやっぱりあの赤い張り紙はあった。
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 おまけに、市役所のお向かいの大きなディスカウントストアにもそれはあった。
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 ひとつの疑問がどうしても起る。一体、たかだか300メートル四方の区域内に、この種の機器が5基もなくてはならないものだろうか。そんなに沢山必要なんだろうか。 
 
 一体この国にAEDがどれだけあるんだろうか。この割で憶測してみると、おそらく何万台ではきくまい。何十万台という規模だろう。日本列島いたるところ真っ赤なハートマークの氾濫である。

 東京の文京区本郷にあるフクダ電子株式会社が欧州のフィリップスから輸入して国中で販売しているこのAEDは、さして大きな物ではないあの機体の中に何が詰まっているのか知らないが、1台23万8千円前後という高価な物である。

 福岡県について言えば、上記のような公共施設がAEDを購入するにあたってお金を出してくれたのは、福岡県市町村振興協会という財団法人であるが、この法人の「事業」の主なる財源は福岡県からの交付金、つまり税金である。

 現在、日本国内の公共施設や私企業等に常備されているAEDの数を、最も少なく見積もって仮に10万台としよう。そうすると、それに上述の単価をかければ、これだけでも購入総額は238億円という巨額となる。

 上述の化学工業日報によれば、2004年7月、AEDが医療従事者ではない一般市民でも使用できるようになった時から、市場拡大にあわせて売上げを伸ばしてきたフクダ電子は、2007年中の売上げ予想を3万台と見積もっている。この数字から推しても、またAEDを取り扱う業者は他にも数社あることからも、上の10万台という数字はきわめて控えめなものであることが分かる。

 問題は、かかる巨額をかけて国中いたるところに設置されたこの器具が、この巨額に見合うほどに使われているのかと言うことだ。それは全く怪しいと言わなければならないだろう。と言うことは、費用対効果の視点をもった国の然るべき部署がこの事態を適切にコントロールしているのだろうかということになるが、それもどうやら無さそうなのである。

 試みに、二、三の施設に聞いてみたところ、案の定、これまで一度も使ったことがないという答えしか返ってこなかった。

 ここに一つ参考になりそうな数字がある。2005年の3月から9月まで半年にわたって開催された愛知万博では、主催者は開催に先立って100台のAEDを用意したが、のべ2205万人をこえる入場者があったのに、実際にAEDを使用したのはたったの3件だったという(朝日新聞、2006/3/12)。

 因みに、この100台のAEDが、購入したのであれば2380万円払ったことになる。6ヶ月のレンタルだったとしても、その総額は、1台ひと月15000円だそうだから、900万円となる。

 200億円とか300億円とかいう、或いはもっともっと巨額のお金を投じて設置したAEDが、その耐用年数の経過する間にいったい何人の人を救うのか。これだけのお金をもし何かほかの急患向けの施設や設備に使えば、どれだけ多くの人々が救われることになるか、想像に難くない。関係政府機関には十分に均整の取れた資源配分の観点から適切な指導を望まなければならない。

 わずか数百メートル四方の区域内に5台もあるという無秩序な在り方をやめさせ、このくらいの範囲なら1台程度を効率よく使用する体制をととのえさせることである。AEDはそぐ傍になければ役に立たないので、それでは足りないと言う人がいるかもしれない。しかし、すぐ傍になければならないと言うのであれば5台でも足りず、20台とか30台とか40台とかいう数をそろえないといけないという話になるのではないか。

 多分ほかにも色々な反論が出よう。それらの反論が多くは現在の公的組織のすがたを反映したものであることは十分に予想される。 
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by ekisaitosuru | 2009-02-19 18:59 | 行政